どうも自分はきれいなものに魅かれるようだ、とぼんやり考える。黒でも白でも、それが純粋であれば美しい。赤でも青でも。黄でも。多分そう。
そう考えたところで、でも自分がこいつを何の色として捉えていたのかが思い出せないことに気付いた。
赤。近いけれど違う。
黒。近いけれど違う。
じゃあ何だろう。
たとえば髪の色、たとえば眼の色、そういえば割とそういうところから印象を受けている。だから思い出そうとしてみると、こいつの瞳の色でさえろくに思い出せない、とまた気付く。
ああ、自分はこうやって色々見逃してきたんだろうか。だろうな。
或いはそういう部分にもっと気付いていればあいつと、
いや、なんでもないのだった。
机で書き物をする、すらすらと動くその手、白い指。前髪に隠された左目。要するに自分はこいつの印象の、半分くらいしか知らない。たぶん。
その前髪をかき上げて覗こうとすると、手で防がれた。余裕のある笑み。どうしたのかと問われて言葉を返す、その言葉はもう脳に届いていない。緑がかった金の瞳を見ている。
ずるい、と呟くと何が、と返る。
何がって決まっているじゃないか。お前は俺の内側だとかそういうものをきっと見透かして知っているのに、俺には教えてくれない。それが大人の余裕だというのなら、子供にだって手段はある。
弧を描くようなその瞳に触れられそうなところまで手を伸ばして、そして、