お題サイト「確かに恋だった」様からお題をお借りしました――「切ない恋10題」
―――好きになる ということは
心をちぎってあげるのか
だからこんなに痛いのか
「ストップ」と、近づけた顔の鼻先に手をかざされた。
もう唇はすぐそこの、キスの距離。
なんでだよ、と抗議するとJは首をかしげた。
ねえ、僕たちのこれって本当の恋なんですか。
そんなあんまりにも透明な瞳でそう問うた。
そうだよ、と言うとJは長い睫毛を瞬かせて瞼を閉じる。
その絹糸のような髪をさらりとかき上げて頬に手をやり、耳元に口を近づける。
「本当の恋だけど、本気の恋じゃない」
Jが驚いたようにその翡翠の目を開く。俺の姿を捜す。
俺はJから離れた所に隠れている。もういない。
大丈夫、もう俺はいないから。
もういいんだ。