(※4が眼が見えないとかいう妙なパラレル)
くらい、まっくらいせかい。
朝起きても何も変わらない世界。
光がこの眼を射る事は無いと知っていても、尚焦がれる。
朝起きてふと、全身が恐怖に包まれる。
何もない世界。空ろな漆黒。
隣に居るのが誰かすら分からない。もう居ないのかも知れない。
もう誰も、自分の傍には。
「J」
自分の手が寝る時かけていた布団に触れる。
その感触の他に何もない。空っぽな寝台。
「J、」
がらんどうな部屋に自分の声だけが響く。しんとした部屋に。
「……J!」
がちゃり、とドアノブの回る音がした。
スリッパが床を歩く音。ぎし、と自分の座るベッドが撓んだ音がして、柔らかな声が耳に届いた。
「どうしたんですか、そんな焦ったような声をして」
見えない。お前が見えない。ただそれだけの事にひどく焦りと恐れを覚え、虚空に向かって手を伸ばす。
手の中に触れたものをがむしゃらにかき抱く。
情けない事に体が震えていた。しんと静まっている身体を抱きしめてようやくその事に気づいた。
「お前が、何処にもいないような気がして」
そういうと、Jの腕が抱きしめ返してきたのを感じた。
あたたかい腕が。
確かに存在する腕が。
「僕は何処にも行きませんよ。君の傍にいます」
「……お前が居なかったら俺は、」
「だから、君の傍にいますって言ってるじゃないですか」
その笑い声の中身が空っぽのようで怖かった。
ずっとつかまえておかないと手の届かない遠くへ行ってしまいそうだと思った。
「…おねがいだ」
弱弱しい自分が全く嫌になって、それでもやはり自分がJを求めている事はどうにも出来なかった。
「俺の光は、お前だけなんだから」