「たとえば」
色の抜け落ちたような白い指が黄色いカードをつまむ。
「俺にとっての<黄色>はお前にとっての<青>にあたるのかもしれないでもそれだってその視覚の中で生きてきた以上疑問は生じないしそもそも疑問たりえない、証明すらできない」
「なんですか、いきなり」
また厄介な事を言い始まった。今回はいつもと方向性が違い、とりあえず少なくともうわべだけは真面目に見えるけれど。
「―――モノトーンは」
「?」
「モノトーンだけは、どんな色が換わっても、変わらない」
トパーズ色の眼に白いカードが映っている。気が付けば、それを見られるくらいに、顔が近い。
顔を寄せ、ひとつのものを見つめる。
「白くなっても、黒くなっても。お前は変わらない」
「…何、を」
「俺はずっと何も間違わずにお前を見てる」
スマイルが指を伸ばし、服に留めた輝石に触れる。一瞬直に胸に触れられたようにどきりとした。微かに緑青の色を宿す透明な輝石。
「最初から、お前の姿を見てる」