「好きだって言ったら信じるか?」
「さあ、ね」
そうやってはぐらかされるから、無意味な会話を重ねる。
「愛してる」
「そんな訳ないだろう」
冷笑的なまでの視線、零下の返答。
「君が僕に求めているのは利用価値だ。他には何もないさ。僕の父を誘い込んだのがいい例だろう?」
「俺は本気だぜ、J」
「どうだか」
うそぶく唇を自分の唇で塞ぐ。
頭を押さえつけて。酸素を奪うように。
酸素を求めて喘ぐように唇を放しても、また塞ぐ。
息も荒くようやく放した時には、唇が唾液に塗れていた。
伝い落ちる銀糸が感情を煽り立てる。
銀の髪を捕まえ耳元で囁く。
「Jが欲しい」
「あげないよ」
上気した頬の下、形のいい唇が無理やりに皮肉げな笑みを形作る。
「君に簡単にあげられるほど、僕は安くない」
「随分な自信だな、ケケッ」
「君の方こそ、僕を捕まえられると本気で思っているのかい?」
挑戦的なピーコックグリーンの瞳が俺の視線と絡む。
「お前が御執心の赤い奴の事なんて、俺が忘れさせてやるよ」
「上等。君がまだその愚かな思い違いを続けるというのなら、相手になろう」
「啼いて喘いだってやめてやらねえぞ」
「それが君の勝利だっていうんならそうすればいい」
首筋に噛み付くように赤い吸い痕を残す。その度に甘い声が上がる。
だけれどJの顔を見れば、その潤んだ瞳の中には俺なんて映っていない。
こいつは何時まで経っても俺のことを見ない。
苛立ち紛れに貪った唇はいつものように甘かったけれど、
どうしたって俺の胸の中に巣食った空しさは消えそうになかった。